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ソウルの五月

海外が私を呼んでくれなかったのだ。とさえ思っている。だってこんなにしょっちゅう、どこそこ旅に出ていて、趣味:出張と書いてもいいくらいなのに、なにせ10年ぶりにパスポートを申請したんだから。「個展の打ち上げも兼ねていきましょうね」と半ば冗談で言っていたけど、あっという間にその日はきた。充電器の変換プラグは、前日の夜にamazonから届いた。wifiの予約もしていなかったから、仁川空港で急遽手配して借りることができた。その時お世話してくれたお兄さん(ヒョン)に、返却の時も会うことができて、「あ!」って顔を覚えてくれてて(初日と同じ洋服だったからだろうね)。「タビは楽しかったですか?」って聞いてくれて。ああもう韓国の男最高おおお! と帰る間際に昂っちゃった。好き。

当たり前なんだけど、当たり前なんだけど、書いてある言葉がいっさい読めない、何て言ってるかわからない。でも「言葉がただの記号になる」ことの快感に、目覚めてしまったかもしれない。身を振る、手を振る、スマホを使う、英語で努力してみる。「アイスコーヒー」が伝わらないことさえ、ローカルなサムギョプサル屋で、勝手に豚肉を2人前くらい注文されてたことでさえ、楽しい。沸く。

そして申し訳ないんだけど、申し訳ないんだけど、やっぱりまた「ひとりでいたいモン病」を発症してしまい、夜の食事以外は、けっこうひとりで行動してしまった。こんな私を、ほっといてくれて、でもちゃんと素敵な店に連れて行ってくれて、ありがとう旅の仲間たち。大人っていいね。

私はどこを旅しても、なぜか水際を求めてひたすら歩く。川、みずうみ、海、水源。そして音を聴く。本を読む。それからちょっと、涙ぐんだりする。何もしない、をしに行く。ほんとどこに行ってもやることは変わらないのだけど、それでも、ひとりで降り立った日曜の漢江は大きくて、空が高くて、みんな幸せそうで。「僕たちずっと健康で、幸せでいましょう」という、7人の声が聞こえた気がしたんだよ。